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房州びわと山の幸 福原農園は贈答用の房州びわを無農薬栽培している千葉県南房総市富浦町の房州びわ専業農家です。

房州びわの品種


現在に至るまで、様々な品種のびわが開発されてきており、産地にあった品種が導入されています。果実の大きさ、形、色、光沢、味、土壌に対する適応性、寒害に対する耐性、病気に対する耐性、樹勢や樹形、花が咲く時期、収穫時期がそれぞれ異なり、全ての面で優れているという品種はありません。
下に紹介している品種の中には、現在ほとんど栽培されていないものも含まれています。房州びわの歴史と栽培方法につきましては、それぞれ「房州びわの歴史」「房州びわの栽培方法」のページをご覧ください。
福原農園では、「瑞穂」「大房」「田中」を6月中旬から下旬にかけて、贈答用に発送しています。「房州びわのご案内」のページより、ご注文をお受けしています。
なお、福原農園では、苗木の販売は行っていません。よろしくお願いします。




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 早生品種   中生品種   晩生品種   びわの耐寒性について

早生品種

・天草早生

1975年に熊本県で品種登録された極早生品種です。偶発実生による品種です。樹勢はやや弱く開帳性の樹形になります。果実の肥大が早いため寒害に弱いです。果実は長卵形で大きさは中くらい。やや酸が高いです。主に九州の産地で栽培されています。

・シャンパン

1945年、アメリカの品種です。樹勢はやや強で、深くまで根が張ります。がんしゅ病にも抵抗性があるため、苗木の台木に使用されています。

・森尾早生

1970年、長崎県の品種です。「茂木」の枝変わりです。樹勢はやや弱く、やや開帳性の樹形になります。果実は低温による障害を受けやすいです。果実は長卵形で大きさは中くらい。肉質はやわらかいが糖は低く、酸は中くらいです。成熟は「茂木」に比べて20〜30日早いです。

・室戸早生

1965年、楠と大房を掛け合わせた、高知県の品種です。樹勢はやや強で、若干、他の早生品種より耐寒性があります。

・小野早生

愛媛県の品種で、樹勢は中程度です。耐寒性は他の早生品種より優れています。花が着く割合は高いのですが、やや酸が高いです。

・本田早生

1942年、長崎県の品種です。偶発実生による品種で、樹勢は中くらいです。果実の肥大がはやいため寒害に弱いです。果実は長卵形で大きさは中くらいで、やや不揃いです。糖度は低く、酸は中くらい。果面に赤あざの発生がみられます。

・長崎早生

1976年、長崎県の品種です。「茂木」と「本田早生」の交雑実生からの品種です。樹勢は強く、直立性の樹形で、寒害には弱いです。果実は短卵形でやや角張り、「茂木」よりやや大きいです。果肉はやわらかく、糖度は特に高くありませんが酸が低く、香気があって食味がよいです。主に九州地方のハウスで栽培されています。福原農園で所有している品種の中では、一番早く花をつけます。鹿児島県の主力品種で、日本で2番目に多く生産されている品種だと思います。

・福聚院


1887年、千葉県の偶発実生品種です。旧岩井村福寿院住職冨山泰宣氏が育成した唐びわの実生です。樹勢は中程度で、早生品種の中では最も高い耐寒性をもっています。多くの花をつける品種です。ただ、果実の大きさがあまり大きくなく、味も他の品種には劣るようです。

・なつたより
2009年、長崎県で品種登録されたばかりの品種です。「長崎早生」と「福原びわ」を交雑して育成した品種です。長崎びわとしては実が大きく、平均60gで果肉はやわらかく、食味がよいです。樹勢は「茂木」よりやや強く、豊産性で、がんしゅ病に対して抵抗性があります。(がんしゅ病のA系統に抵抗力がある品種は現在、「なつたより」のみ。そのかわりC系統の菌に弱いという弱点をもっているため、これに強い品種が開発されつつあるそうです。)九州地方で数年前、台風によりびわの木が大きな被害を受けた地域があり、その地方を中心に新しく植えられています。「茂木」を上回る糖度をもつため、九州地方では新しい主力品種になっていくかもしれません。枝が裂けやすいので、誘引するときに少し注意が必要です。

中生品種

・楠


1876年、高知県で楠正興氏が育成した品種です。「唐びわ」の実生で、高知県、千葉県で栽培されていました。特に千葉県では早生品種としてだいぶ栽培されていましたが、耐寒性が低いため、現在はほとんど残っていません。樹形は開帳性で樹勢は強いです。果実は中くらいで、丸形、長形の2系統があるといわれています。果肉はやわらかく酸は低いので食味はよいです。果肉が薄く、可食部分が少ないという欠点があります。他の品種に比べて根の量が多く、根が深くに張るので、苗木の台木として適しています。

・野島早生

1955年、兵庫県で育成された「田中」の偶発実生による品種です。樹勢は強く、やや直立性の樹形を示します。耐寒性は弱い方です。果実は長卵形でやや角ばっていて、大きさは中くらいです。果肉はやや硬く、糖度はそれほど高くないのですが、酸が低いため口当たりはよいです。赤あざ、そばかす、われなどの生理障害が出やすい欠点があります。

・里見

里見
1981年、千葉県団地園芸試験場が育成した「楠」の自然交雑品種です。樹勢は中くらいですが、枝の分岐、成長が旺盛で、結果樹齢に達するのが早く、花つきもよいです。果実は「田中」に似た短卵形で、果皮は光沢のある橙黄色で外観が美しいびわです。果肉はやわらかく多汁で、糖、酸共に高い傾向があり、味は濃厚で美味です。若い木では角ばったびわが出やすいです。

・富房



1989年、千葉県暖地園芸試験場が育成した、「津雲」と「瑞穂」の交雑品種です。樹勢は中くらいで、強い直立性を示すので、若木のうちに枝を下に誘引する必要があります。耐寒性はやや弱く、花つきはとてもよいです。果実はやや丸形の短卵形です。果肉はしまっているが硬くはなく、糖度はやや高く酸は低いです。露地で作った場合、収穫時に雨が降ると、実が膨らんで裂果することがあります。ハウス適応性が高いため、千葉県ではハウスで増植されています。福原農園でもハウス栽培の主力に、と考えており、2012年にハウス内に植え付けました。2021年より本格的に出荷を始めています。

・茂木

茂木
1830年頃、「唐びわ」の種子をまいて育てたものがもとになっています。九州では最も栽培が多い品種です。樹勢は強く、直立性の樹形を示します。寒害をやや受けやすい品種です。果実はやや小ぶりで長卵形です。果皮は橙黄色で光沢があり、果面に発生する生理障害が少なく、外観が美しいびわです。果肉はやわらかく多汁で、糖度は中くらいですが酸が低く、食味がよいです。現在、日本で一番多く生産されている品種で、長崎県が主な産地になっています。

・大房


1967年に千葉県で命名されました。それ以前から「703号」という品種名で知られており、千葉県と兵庫県で増植されていました。以前の品種名から「ナナサン」と呼ばれることもあります。「タイブサ」という読み仮名で名前を申請したところ、受理されず、「オオフサ」になってしまったという経緯があり、3つの名前で呼ばれている品種です。富浦では「タイブサ」と呼ばれることが多いですが、やや年配の方は「ナナサン」と呼んでいます。正式な呼び名は「オオフサ」なのですが、産地ではその呼び名はあまり使われていません。
「田中」と「楠」の交雑品種と言われていますが、DNAを調べてみると、どうやら違うらしい、ということです。開発された当時はすぐれた品種だと思われていなかったため、廃棄される運命だったところを拾われて、だいぶ時間が経過してから品種登録されました。そのため、当時のゴタゴタの影響で親が正確にはわからない、ということになってしまったようです。栽培地の適応性が高いこと、がんしゅ病に比較的強いこと、酸が低く果実の甘みがストレートに味わえること、寒害に強いことが認められ、房州びわの現在の主力品種です。樹勢は旺盛で、樹形はやや開帳性です。枝が太く、葉も密生します。耐寒性は現在開発されている品種の中で一番強いと言われています。果実は短卵形の極大果で、赤みの強い橙黄色の果皮をもっています。糖度はびわの中では特に高い方ではないのですが、酸が低いため、甘みが強く感じられるびわです。千葉県が主な産地です。

・房姫


1995年、千葉県暖地園芸試験場で育成された、「楠」と津雲」の交雑品種です。強い直立性を示し、樹勢は強く、耐寒性はびわの中では中くらいです。土壌適応性が高いため、広範囲の土質で高品質の果実を生産することが可能です。果実は短卵形で、果皮は橙黄色ですが緑斑が残ることもあります。糖度は高く、酸は低いです。果肉の歯触りはやわらかく、多汁で食味は良いです。

・房光


1981年、千葉県暖地園芸試験場で育成された、「瑞穂」と「田中」の交雑品種です。樹勢は中くらいで、木が若いうちから開帳性を示、耐寒性は強いです。果実は短卵形ですが、やや長形です。大果で果皮の色は橙黄色ですが、完熟すると桃色を帯びます。果皮に発生する生理障害が少ないため、外観が美しいです。糖、酸ともに高く、濃厚な食味でおいしいです。ただ、完熟を収穫しないと高品質を発揮できないため、収穫には熟練の目ききが必要です。福原農園でも栽培していますが、本数はあまり多くありません。福原農園で栽培している品種の中では、自然落果しにくい方なので、遅めの時期に収穫しています。

・福原びわ

びわ(福原)の植え付け後
1961年、旧富山町の福原周平氏が中国から持ち帰った白びわの種子を育て、これに「瑞穂」を交配して作ったた品種です。樹勢はとても強く、直立性の樹形を示します。果実の耐寒性はやや弱いです。果実は極大果で、果形は短卵形で果面に凹凸があります。白びわの遺伝子が入っているのでが実の色は他のびわほど鮮やかではありません。肉質はやわらかく、糖がやや高く酸が低いので食味はいいです。房州びわの中では比較的苗木の入手が容易です。「長崎クイーン」という名前でも販売されています。
福原農園では2013年から、露地に植え付けを進めています。

・戸越

戸越
1939年に旧農林省園芸試験場が公表した品種で、「茂木」と「田中」の交雑品種です。直立性の樹形で樹勢は強いです。果実は大きく、短卵形でやや長形です。糖度は中くらいで酸が低く、肉質はやわらかいので食味はいいです。ただ、果皮にそばかすが多くみられ、外観が損なわれることと、日持ちが悪いため市場出荷には向かない品種です。現在はあまり栽培されていない、「珍しい」品種です。

・希望

種なしびわ
2006年に千葉県農業総合研究センター暖地園芸研究所で品種登録された種なしびわです。遺伝に重要な役割を果たす染色体の数を通常の2倍に増やした「田中」の実生(4倍体)と通常の染色体数の「長崎早生」を掛け合わせて生み出されました。3倍体の植物には種ができにくい、というのは、びわ以外に、種なしスイカにも活用されている技術です。果重は70gほどで、種がない分細長くなった果実の形と、通常のびわよりしっかりした軸が特徴的です。糖度は千葉県農林総合研究センターの測定で11.5度で、数字的には、「富房」、「田中」と大差ない値になっています。年々、栽培技術が改良されており、数年前は、通常のびわの方が味がよいように感じられましたが、2011年に食べたところ、通常のびわとほとんど変わらないように感じられました。千葉県のごく一部の農家でしか栽培されていないため、一般には流通していません。福原農園が研修にいっている、ほずみ・びわランドの穂積昭治さんが中心になって栽培を進めています。

晩生品種

・土肥

土肥
1877年、静岡県の品種です。中国のびわの種を育てたもので、当初は品種の形質にばらつきがあったのですが、その後選抜を行い、優良品種の1号、2号、3号の品種が接ぎ木されています。土肥温泉の特産品として有名です。やや開帳性を示しますが、樹勢は強く、枝は太いです。耐寒性は中くらい。果肉が白い、いわゆる「白びわ」で、やわらかく、緻密です。糖は高く、酸が低いです。ほんのりと香気があり、大変美味なびわです。

・能重早生

能重早生の花芽
1946年、千葉県旧岩井町の能重浅次氏が育成した品種ですが、交配親は不明です。千葉県の当時の主力品種の「田中」よりは収穫時期が早いため、「早生」とついていますが、びわ全体からみれば晩生種に属します。直立性で樹勢が強く、大型の樹になります。耐寒性はやや弱いです。果皮は赤身の強い橙赤色です。果肉はやや硬く、食味、果実の形、大きさは「田中」に似た特徴をもっています。
※ 中井先生の本中の分類により、晩生品種に入れていますが、収穫時期は比較的早いようです。

・瑞穂

瑞穂房州びわ「瑞穂」の花芽
1936年、旧農林省果樹試験場で発表した品種で、「田中」と「楠」の交雑品種です。樹勢が強く、大きな木になるため、うまく枝を誘引しないと作業性の悪い木になってしまいます。果実は短卵形で極大です。福原農園のびわも4Lのほとんどがこの品種です。果皮は黄土色で緑斑が残りやすいです。また果皮に赤あざやそばかすが出やすいという問題があります。糖度は特に高いわけではなく、酸も中くらいですが、甘酸のバランスがよいです。肉質はやわらかく、多汁で食味はよいです。福原農園では、よその農家さんより、この瑞穂の割合が多いです。

・田中

田中
1879年、東京の田中芳雄氏が育てた品種で、長崎から持ち帰った大きく美味な「唐びわ」の種をまいたものだと伝わっています。果実が大きいことを伝え聞いた千葉県のびわ栽培者が頼みこんで種と穂木をもらい受け、千葉の房州びわの栽培が本格的にスタートしました。樹勢は強く樹形は開帳性で、耐寒性は強いです。果実は大きい短卵形で、果皮は橙黄色で光沢があります。外観が美しいびわです。果肉はやや硬く、完全に熟していないものは酸が高いです。完熟しているものは甘酸のバランスがよく、濃厚で美味です。成熟期はびわとしては最も遅い品種であるため、6月終わりごろ、流通します。土壌条件による品質の変化が大きいため、上手に栽培することが難しいびわです。愛媛県、千葉県、香川県、兵庫県などで栽培されている品種です。

・森本

兵庫県で「田中」の枝変わりとして発見された品種です。樹勢はやや弱く、開帳性を持ちます。耐寒性は比較的強い方です。果実は短卵形で大きく、果皮の色は橙黄色ですが赤みが強いです。果肉はやや硬く、糖度は低く、酸はやや高いです。収穫期は一番遅い方です。

・白茂木

白茂木
1982年、長崎の品種です。「茂木」の種子に放射線を照射して突然変異を誘発させたものです。樹勢は中くらいで直立性の樹形を示します。耐寒性は比較的強いです。肉質はやわらかく、糖度が高いので美味です。6月中、下旬に成熟します。

他には、中国から導入された品種として、「大紅袍」「青種」「華宝2号」「白玉」「狭脚」などがあります。新しい品種として、「涼風」「陽玉」「麗月」などがあります。「涼風」は「茂木」よりも糖度が高く、花が多いため生産が安定しています。「陽玉」はやや作りにくい面があるものの、「涼風」より品質、外観をよくすることも可能です。「麗月」は白びわの一種であるため、果皮が黄白色です。糖度は14度にもなります。ただ、露地では裂果の心配があるため、ハウス栽培向きの品種です。また、最近では、観賞用に、斑入りの品種もあります。

びわの耐寒性について

 このページに記載している通り、びわの品種により耐寒性に差があります。これは花芽の形と、花芽が成長する時期が早いか遅いかに関係があります。まず、花芽の形によって、寒気の中に花(実)が入りやすくなったり、入りにくくなったりします。
びわの花芽(耐寒性弱)
花もぎをした後のびわの花芽です。この花芽のようにY字型になっているものは花が外部の寒気の中に入りやすく、寒害を受けやすくなります。
びわの花芽(耐寒性強)
花もぎ後のびわの花芽です。この花芽のようにT字型、あるいはさらに下に曲がっているようなものは外部の寒気に花、実が入りにくく耐寒性が強くなります。
 びわの種ができ始めたころが、一番寒さに弱いです。花芽の成長が早い時期から始まる品種は3月ごろ、種ができ始めてしまうので、その時期に寒気が来ると種が死んでしまい、実が落ちてしまいます(実を切ってみると白いはずの種が黒く変色しています)。花芽の成長が遅い品種は3月ごろに種ができていないので、種が死ぬこともなく、寒害を受けません。
 びわはもともと暖かい地方原産の植物ですが、その割には葉も木も花もある程度寒さには耐えられます。ただ、初期のびわの種は寒さに弱いため、びわの種を寒さから守るしくみがあるかないかが、そのまま耐寒性が強いか弱いかになっています。

霜が降りたびわの木
上の写真は霜が降りたびわの木です。上部の葉だけ、霜で白くなっているのがわかります。木の内部、下部は放射冷却の影響を受けにくいため、そこについたびわの実は寒害を受けにくくなります。このように同じ木についたびわの実でも、耐寒性は実がついた場所により異なります。

参考文献  「びわ 房州ビワを中心とした栽培法」  中井滋郎先生 枇杷倶楽部

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